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風の谷〜泰阜村   
   緑の風に吹かれて

 悠々での暮らしが長くなった永住入居のお年寄りたちが、95歳に近くなると人格の崩壊が少しずつ進んでくるのが感じられる。もうTVと現実の世界の境界は薄れ、季節や時間の感覚も薄れ、ゆっくりとケアスタッフの腕の中で眠っては起きて食べ、少しずつ少しづつ活動時間が減ってきて、眠りについている時間が増えていっている。
 悠々の理事たちも後期高齢期に突入したお二人が、脱水症や病を得て入退院を繰り返すようになった。
この事態を管理者としてどうするか?泰阜の深い緑に包まれながら、模索する。
 この地では、森の中に咲く笹百合の高貴な薄紅色に慰められ、小鳥たちのさえずりのシャワーに勇気づけられ、悠々を訪れる視察の方々に励まされてあと一歩前に進もうと思う。
 先日、日本リハビリテーション医学会で泰阜村の調査結果を発表する機会を得た。その作業の中で、この過疎山村に住む人々の特にお年寄りの生き様をまざまざと感じ感動のあまり言葉を失うことがしばしばあった。そしてそれを学会で発表した。
 私の発表セクションは「地域リハビリ」分野であったのだが、リハビリテーション医療の最前線で戦っている現場の医師たちが、僻地医療(特にリハビリ医療)の最中にあるこの村のお年寄りの実に89%が在宅で介護され亡くなっている事実に感動した。
この村のすさまじい医療環境にあるお年寄りのQOL(幸せ度)が全国平均と比べて同じくらいであること、そして独居であろうと亡くなる直前まで家で過ごし、急変して病院に担ぎ込まれても2,3,日でコトンと逝かれることを「お年寄りたちが、自然の理として受け止めているのは何なんだ」と尋ねられ、「データーからはそれを証明できないのが残念ですが、覚悟です。大自然の一部でもある生き物として自分の死を理として受け止めている覚悟があります。」と答えた。

 この村の多くのお年寄りたちは、働いて働いて死ぬ間際まで働いて、それを苦にもせず、85歳を過ぎると「次はわしの番かな」という。暑い夏が来て熱中症でバタバタと担ぎ込まれるけれど、2,3日して危機を脱すると、その足でもう田んぼや畑に出かけている。
山の奥深くで人知れず古木が朽ちて倒れるように、この村のお年寄りが今年の夏もどれだけ往かれるのかを思う。
 そして後に残されるものは・・・・寂しくてたまらない。
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