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風の谷〜泰阜村   
  90代男性たちの生きる意味 考

 昨日は恒例の「大祓い」の式が執り行われ、最近入居なさった90代のご夫婦が感動しておられた。

「大祓い」は、山郷に住む民たちが山の神々にこの1年の罪咎を払い、来る年の幸いを祈る伝統行事である。神主様の祝詞に頭を下げ玉ぐしを捧げて、あらためて自分たちが山の恵みを受けていたこと、災害や危険に満ちた山での生活に山の神々の守りを祈ることを通して、山とそこに住む民の生活が決して安定したものでないことを自覚する祭りでもある。

 

 

 式の後、入居者や理事とスタッフ、近隣のお年寄り達との「直会(なおらい)」で御下がりのお神酒やお供物の鯛を分かち合いながら、顔見知りの人々との談笑を楽しんだ。

 「久しぶりに楽しんだ。これからも呼んでください」と、送迎車の中で近隣のお年寄りたちが赤い顔をして口々に言う。その笑顔を見ながら、介護保険サービスにこの生活に密着した年中行事の導入はあったかな〜・・・と思う。会費2千円、もちろん大赤字である。実はこの予算について、理事長と会計責任者の役員とのあいだに丁々発止の議論があった。しかしお金には代えられない宝があるのだ。「お年寄りの心からの笑顔を見たい」と懇願し、説得し、乗り切った。

入居者たちはみな80代後半から90代である。ご近所の顔見知りたちとのこんなに楽しい会に、90代の男性入居者たちがあたりまえのように一杯飲みながら団らんして、人としての交わりを取り戻すなんて、近年林立する高齢者施設にあったかな〜・・・と思いながら、暖かな和みの中で私も久しぶりに幸せを味わった。

 その夜一人の92歳の入居者に呼ばれた。「もう死にたいと思っていた。自分は生きすぎたと思っていた。しかし今日のような楽しい行事に参加して、もう少しこの世を楽しんでもいいかなと思えた。明日からはご飯をよく食べて、散歩してお迎えが来るまで生きてみようと思う。先生よろしくお願いします。」92歳男性、体重36Kg栄養失調の様々な兆候が出ていた。この体で96歳の重度認知症の妻の面倒を看ていた。コンビニでおかゆを買って食べていた。時々倒れて近医で点滴を打って生き延びてきたという。

 人はいろいろな事情を抱えて生きている。たとえ90代になっても人間らしい交わりが生きる勇気を与えるのだと改めて思ったことであった。

 

 

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