風の谷〜泰阜村
暑い夏・「悠々」の応援団
TVニュースで、とうとう高齢者が熱中症で死亡(室内で)というニュースが飛び込んできた。恐れていたことが起き始めた。山国の南信州泰阜村では、昔は夜は長袖の寝間着を着て、戸を閉めて夏布団を掛けないと朝方は寒くて目が覚めたものだった。だから高齢者だけの家ではあまりクーラーを入れている家は少ない。(電気代がもったいないのでめったにスウィッチを入れない)。日中雨上がりの(今年は雨が多い)部屋の中は山からの涼風も止まり、蒸し風呂にいるようだとの表現がぴったりくるようになった。その上夜、信じられないだろうが、年寄りは寝間着の下に長い丈の股引(ネル/flannel)をしっかりと履き、長袖の肌シャツを着ている人が多い。(悠々でも夕方薄物に着替えさせても、朝方しっかりと長袖セットをお召しになっているが)そんな恰好で昔のように戸を閉てて寝ている姿を想像するだけで、胸が詰まる。
悠々では今全館クーラーを28度に設定している。電気代は月額20万を軽く超えるが、お年寄りたちの命の値段だと思えば高くないと思っている。その上毎日朝晩ソフトアイスノンを一人一人の枕の下に入れることにしている。こうしておけば、「夜男が入ってくる」とか、「夜男に覗かれる」と言って個室の戸と襖に筋交いを中からかけていたとしても、体を冷やせば何とか熱中症から救えるのではないかとの考えである。事実これは好評で、年寄りたちはよく眠れると言ってくれる。
さてお盆が目の前に来た。夫の新盆を控えた婆様は、そのことで心身が絶不調である。自由にならないわが身を悔いている。他人の我々ではどうしようもないところが歯がゆい。お年寄りを抱えていると身内の新盆に思うようにならない不幸を嘆く光景に出会うことが多い。我らケアの奉仕団は、「うんうん」と傍にいて手を握ったり、背をさすったりしながらその煩悶に寄り添うしかない。
その悠々には、夏の甲子園のあの応援団のように力強い応援団が居て、膝丈まで伸びてしまった一面の夏草を汗みどろになりながら、ささっとやってくれるボランティアさん、毎月1回開催の「生活リハビリ教室」には、休みを取って賄いの応援に来てくれる家族ボランティアさんがいる。この夏は、様々な採れたて夏野菜の寄付があった。トマト,きゅうり,インゲン,オクラ,トウモロコシ,大玉スイカ,夏大根,坊ちゃんカボチャ,ジャガイモ,紫玉ねぎ・・・等々である。
悠々の貧しさは村の隅々まで知れ渡っているらしく、自分の家族用菜園からの直送品が届けられる。
これがどんなに嬉しいか、頂いた野菜で今日はどんな献立にしようかと頭をひねるのも楽しみの一つである。
この時期は村外の応援団からも様々なお届け物がある。珍しい果物,ソーメン,冷菓,・・・何よりもうれしいのは夏休みに子供たちを連れて悠々でその賑やかな声で私たちに元気を下さる友人たちの訪問である。
「悠々応援団」に支えられて私たちも頑張れる。
皆様,遅まきながら暑中お見舞い(残暑?)申し上げます。そして日頃の応援に心からの感謝を捧げます。
『こうしておけば、「夜男が入ってくる」とか、「夜男に覗かれる」と言って個室の戸と襖に筋交いを中からかけていたとしても』 という文言には、思わず笑みがこぼれました。
悠々の周辺には力強い応援団や、季節ごとの新鮮な作物を届けてくださる方々がいてうれしいですね。悠々の賜物ですね。