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風の谷〜泰阜村  
「家族会」と言う名のボランティア

 泰阜村の街道と言う街道に可憐な黄花コスモスが群生し、日陰にホタルブクロの花が揺れ、我が家隣の林道の笹ユリが散っていって、南信州の初夏が終わり本格的な梅雨に突入した。ところがこの梅雨、しとしとと降るとは大違いで、毎週のように大雨注意報が発令され、ざあざあと降ってからりと晴れ、夏のギラギラとした日差しが田や畑に照り付ける。表面は濡れるが流れた水はじっくりと地に吸い込まないので、作物に水が足りないという現象が今年も起きているようだ。(部落の集会で水争いの話がもう出てきた)

 季節は栗の花の満開(ひげ爺)が至る所で見られるようになり、深い緑に包まれて夏を迎える気配がする。

 さて、悠々の庭の片隅に先代の入居者が開拓した二坪ほどの菜園に、今年もきゅりとトマト、ナスが実をつけ始めた。

近在の理事さんが、入居者の婆様たちの散歩時の気晴らしにと、手入れについていろいろケアスタッフに指示をしている。半端じゃないほどの忙しさの中で、ケアスタッフは肥料の撒き方、水のやり方を伝授されているようだ。

悠々の軒先には燕が三番巣というそうだが、同じ巣で三回目の子作りの姿が見えて、婆様たちを喜ばせている。

 さて、このほどこの悠々の190坪ほどの敷地の草刈り(2ヶ月でもう膝丈まで伸びた雑草)が、気づかぬ間にささっと一掃されていた。この仕事人は入居者の親族のお一人であった。

 センター長「申し訳ない、私たちが出来ないので業者にお願いしようと思っていたところなのです」とお礼(お詫び)を伝えると、Hさん「いやいやこれはお世話になっている私たち家族会の仕事と思っているんです」と言う。

えぇ!「家族会?」そんなのいつ出来たんだ。「重度認知症の叔母のお世話、有難くて、申し訳なくて、何かお手伝いをしたいが、これぐらいしか私らには出来んので」「・・・・」

 10年間の悠々の中で、しばらく途絶えていたボランティアさんが現れた。自発的に表れたのだ。本物のボランティアとはこのことをいうのだと知った。「悠々を潰さないために、私らができることは何かと考えたんです」とHさんは言う。

 お預かりしたお年寄り一人一人を大切にするケアを、存続して欲しいと願う家族がここに居たのだと知って、支えられ元気になる。さあ今日も頑張るぞ!

風の谷〜泰阜村    
   〜研究者魂に火がついて〜

 6月中旬、大雨警報の出ている神戸にむけ、緑の森の中に笹百合が16本も咲いている我が山荘を後ろ髪を引かれる思いで出発した。憧れの神戸でしかも第56回日本リハビリテーション医学会学術集会の座長にとの招聘であった。医療ソーシャルワーカーであったが、医師団の学術集会に座長へと招聘されたのは28年間の学会員生活の中で初めてである。かつて中部圏F大学と、関西圏H大学の医学部リハビリテーション医学教室に研究生として9年間所属し、研究発表、学術論文を発表していた経緯があるものの、1人のソーシャルワーカーが医師団の主催する【社会復帰・復職・更生】セッションの座長の席に着いたのは、初めてであった。やっとリハビリテーション医療の分野において、ソーシャルワーカーが専門職種として受け入れられたのかという感慨がある。

 

 

 さて悠々では、この名誉あるお誘いを受けて、取り合えずセンター長の悠々365日勤務をどう調整するかの課題が勃発した。

理事会にて、センター長出張許可とその2日間の勤務体制の補充をどうするかの議題を出した。

(今後予想される理事・センター長365日出勤体制における体調不良の際の非常時代替勤務者確保の件)

現体制は、5月半ばから受け入れた常勤ケアスタッフ1名・4日/週(am9時〜pm6時/早朝ケア困難)、常勤賄いスタッフ1名(5日半/週am6時〜pm6時/但し昼休み休憩4時間)+非常勤ケアスタッフ2名(看護師スタッフam7時〜12時半・1回/週)+(介護ヘルパースタッフam7時〜pm4時・1回/週)のみである。

  これに対して理事会からの提案は以下の4点であった。

〕弉雜遑気瞭居者に対し、センター長出張中1泊2日のショートステイ導入し、留守中のケア負担を軽くする。これにかかる費用は、全額当組合にて負担する。

△海両魴錣髻⇒弉雜遑気Mさんのご家族に提示しショートステイ利用の許可を取る。

ご本人にも(脳梗塞再発による右片麻痺は残存するものの認知症はなく、意識は清明)この緊急事態を伝え、ショートステイ利用の快諾を得る(泰阜出身だがご本人は名古屋で人生の殆どを過ごし、泰阜住民との交流はない)。入居以来6年間地域の高齢者との交流機会が少なかった。

 一方勤務体制は、当日の朝ケアから夕ケア(am7時〜pm6時/含休憩3時間)までの丸一日を非常勤ケアスタッフが応援し、賄いスタッフも休みを返上して丸一日の勤務(朝6時〜夕6時/含休憩4時間)を応援してくれることになった。さらにショートステイへの送迎は、理事のお一人が快諾し、センター長となった本田を本来の研究者への場に送り出していただけることになった。

 これが決定し学会出席が可能となってから、本田の心に猛然と研究意欲が湧きだし、従来の中山間地域泰阜村の実態調査への追跡調査の学会発表に挑戦した。残る時間は数日(最後の3日間は昼夜睡眠時間無で驚異の研究時間を確保)、村長の許可を得(村長、副村長、福祉課長等との協議の結果)2007年調査時に調査協力を得られた住民世帯714世帯/1817人(82.77%)の帰趨(死亡,入所,転出,転入,出生)について住民台帳から調査した。

 その結果、2014年の追跡調査時には限界集落が5集落から10集落に増加し、消滅集落の発現が危惧されていたものの、12年後の今回の調査では消滅部落は存在しないことが明らかになった。それはギリギリのところで〇匐,燭舛親の住むふるさとへ介護のために帰ってくる実態と、大都会から子供たちの育児のために大自然の溢れる泰阜村へ転入する家族等が、好んで限界集落の空き家へ(村が買い取って住宅改修している)転入を希望しているからであった。さらには、そのような大自然に囲まれた自然の中で子供たちを教育することを目標に30年前に立ち上がったNPO法人グリーンウッド(通称だいだらぼっち)が時代の風を受け、その主要な事業の一つである【山賊キャンプ/3日間コース,1週間コース,1ヶ月コース,3ヶ月コース等】が盛況で、年間2千人ほどの参加者を選抜するほどになり、参加した子供たちが都会に戻りたがらないという(そうありなん・・・)経過もあり、リピーターの子供たちがやがては大学生になり泰阜にボランティアとして戻ってくる事例もある。さらに本年1年間で泰阜村への転入者が実に232人あり、転入者世帯の出生もあって、出生者数も44名/年あった。

これらの結果は、

 村の住宅政策:村営住宅の増設・木造平屋建て一戸建て家賃35千円/月等、

 児童政策:医療費自己負担分免除(中学校まで)、保育費免除、

 高齢者に対する医療政策:投薬分自己負担500円/月、

 

 村の先鋭的な政策効果と、大都会住民が大自然の中で生きることを希求する時代の風を得て、消滅部落の出現を止めている幸いな南信州過疎山村(かつて陸の孤島と揶揄されていた・・・今もか?)泰阜村が、静かなブームを巻き起こしていることを報告する幸いな機会を得たのであった。

 この機会を与えられた村役場の甚大なご配慮に心からの敬意と感謝をささげます。

 

 

 

風の谷〜泰阜村   
   初夏・若葉色の風を浴びて

 南信州里山に最も美しい季節がやって来た。広葉樹林から吹く風は、むせ返るような黄緑色のエネルギーを運び、小さな命をあちこちで育んでいる。我が山荘にも雨戸の戸袋の中に小さなセキレイの雛が4羽、ピーピーピーとかしましい。

 隣の広葉樹林から餌をせっせと運ぶセキレイの夫婦が、人間の目を盗んでは戸袋の中に滑り込む。

一方悠々の軒先には五つのツバメの巣に雛が孵っている。一方雉鳥は小さな雛を連れて悠々の庭に現れる。

 年寄りたちはもっぱら、ちび雛たちが青大将にやられないようにと観察結果を報告し合っている。

 我が山荘の書斎の窓からは美しい黒文字の緑が美しい。

さて、悠々の常勤スタッフが居なくなって2か月が過ぎた。会う人ごとに「若くなったね〜」お世辞だかなんだか言われる。

しかし78歳、年は争えないもので或る朝血圧が94/下が57と出てその次の朝、激しいめまいで起き上がれなくなった。とうとうきたか、私の持病・・・ここまでよく持ったものだと思っている。

 隣の(自宅からぐるりと回った反対側に住む隣人)に「助けてコール」を掛け、非常勤で来て頂いているNさんに急遽朝ケアをお願いした。「本当だったら、もうちょっと行ってやってもいいんだけど」との身に染み入る言葉も頂いて、この難局を乗り切った。一日殆どをベッドに居たおかげで、今日は入浴ケア+賄い+夕ケアを頑張れる。

 その上6月8日には、映画界ではよく知られた河崎監督の出前映画を悠々で開催することが決まった。

 この知らせを悠々のお婆様たちに伝えたところ、「えぇ!嬉しい。ほんとかね」に続いて、お一人の口から出た「愛染かつら」の主題歌を皆で合唱してしまった。幸せは、天から恵みのように降ってくるのだとまたまた感動してしまった。

 

 心優しい人たちに支えられ、励まされて頑張れる。感謝である。

 

 

 

風の谷〜泰阜村    
 浅黄色の風を浴びて〜悠々の婆様たちの暮らしぶり

 里山の緑の海から伊奈谷にむけて浅黄色の風が吹き渡っている。悠々のベランダには燕たちが戻ってきていつもの初夏の賑やかさで満たされている。今年のツバメの巣はとうとう6つ出来上がり、二つの巣で抱卵がみられる。後の巣はせっせと通う夫婦燕たちが子作りに忙しいのだろうか。子供たちが巣立つまでは悠々のベランダは使用中止(燕の糞被害を甘んじて受ける覚悟が必要)となっている。汚れたベランダを、暇を見つけてデッキブラシで磨くのは、燕が大好きなセンター長の仕事になっている。今一つの重要な仕事は、燕の卵を狙う青大将を見張っていることかな・・・。悠々の婆様たちは毎日このツバメの動向を観察しながらおしゃべりを楽しんでいる。みんな元気だ。おいしい手料理を楽しみ3時と10時のお茶にはしばしば頂き物の饅頭やケーキやクッキーが出されている。入居者を訊ねる親族や、お友達の手土産である。入居者5名元気で口々に「楽しい、幸せ」と言う。

 「先生 体に気を付けて元気でいてくれなきゃいかん。わしは最後までここにおりたい」とおっしゃる。嬉しいことである。スタッフが理事長交代で常勤スタッフ二人が辞め、センター長になって右往左往している私を、まるで娘のように、妹のように気遣う心が嬉しくて、何故か50日12時間勤務で休みなしでも元気だ。これは自分でも予想を超えた現象でびっくりしている。

 「先生は人間じゃないな、化け物だ。」と誰かに言われたっけ。自分でもあんなに病気満載でときどき倒れていた自分はどこに行ったのかと不思議に思う。でもこれは、暖かい非常勤スタッフの思いがけない応援と、入居者の優しい言葉かけ、社協のスタッフの暖かい応援、理事さん達の力強い励まし等々、貴重な賜物の成果である。

 80歳の誕生日まであと1年9か月・・・行けそうな気がするよ。大丈夫だよ。

 このごろあまり泣かなくなったよ。介護鬱回復に向かっているかな・・・

 

風の谷〜泰阜村     
   悠々の奇跡

 桜吹雪が舞い散る中で、広葉樹の新芽がめぶき里山が浅黄色に染まってきた。「本物の春だよ」と里山全体がその生命の輝きを歌いだしたような気がする。その中を鶯の鳴き交わす声、様々な渡り鳥の声が響きわたり、人間は宇宙の命の中の小さな一つに過ぎないことを感じる。

 さて賄いさんとの二人職場(休日なし、たびたび休憩もなし)の過酷な日々が昨日で23日経過した。人間って(高齢に関係なく)やろうと思えばやれるものなのだと感心してしまった。

 その上、天から情けの恵み(サポーター)も降りてきて、倒れそうな私の元気の源になっている。

 一つは、足に障害を抱えているにもかかわらず、非常勤のヘルパーさんが「週2日勤務してあげるよ」という。加えて孫育てで忙しい非常勤の週1(半日)勤務だった看護師さんが、「4月29日は一日(朝7時〜午後6時)11時間来てあげるから一日ゆっくり休みな」と信じられない優しい言葉を頂いた。

 天から恵みが降ってきたと感じた。78歳の心と体が、「もうだめかもしれない」と弱音を吐きそうになる寸前で、この「頼りきっている5人のお年寄りの嫁として、その命の最後まで伴走すること」を許されたのだと感じた。

 今の私にとって奇跡とは正にこのことを指すのだと思う。お年寄りを支えるためには、私もこうして支えられなければならなかったのだと知った。

 天は、私をまだ此の世で必要としてしてくださるのだ。

 その上昨日は、入居者のご家族が、見ていられないとのことで小さな雑務を担ってくださる方を紹介してくださった。その方と面接の後、入居者の婆様たちとお茶をしてお帰りになる時に、そのお婆様一人一人がそっと、「ぜひ悠々に働きに来てくださいね」と頼んでいるのを見た。私が倒れないようにと助けを探し求めていたのだと知って、尊くて嬉しくて涙が止まらない。

 悠々にも春が来ている。

 


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