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風の谷〜泰阜村   
   海のない南信州にトロ箱満杯の鯛の贈り物!

 昨日、突然にトロ箱満杯の黒鯛が5尾、巨大な出世魚の鱸が1尾、氷詰めの宅急便で届いた。開けてびっくり仰天とはこのことか、スタッフも入居者もお魚屋さんに行ったことがない。最近はスーパーでも切り身しか目にしたことがないので、その一尾の美しい姿を目にしたことがなかった。トロ箱を皆で覗きながら感動し大騒ぎとなった。

 一昨日友人から電話で「瀬戸内海の朝採りの魚が手に入ったんだけど、氷詰めにしてあるからそのままそちらに送っていいかな?」と言う。「いいもなにも、そんな贈り物聞いたこともない。南信州では魚の贈り物なんて見たことも聞いたこともないんだよ。嬉しい!送ってください」と懇願した。ああ〜神様・仏様どんなにスタッフと入居者たちが喜ぶかと思い、それからというもの「瀬戸内海の朝採りのお魚がね、明日トロ箱で届くんだって」「キャー嬉しい、早く見たい、瀬戸内海のお魚!」とスタッフは大喜び。

 早速悠々の料理人さんが「最近使ってないので刺身包丁が切れん・・」とつぶやきながら、その日の夕食に黒鯛の刺身を皆で堪能した。92歳のおじいちゃんも88歳のおばあちゃんも「ホンにわしは生きてる間に鯛の刺身を口にしたことはなかった。こんな日が来るなんて思いもしなかった。有難い、ホンに有難い」と言う。あまりに大量なので、スタッフも役員さんもおすそ分けを頂いてニコニコして家に帰った。「久しぶりにかあちゃんと食べるかな・・・」

 その喜ぶさまを見て、山郷の民たちは鯛の刺身(高級魚)など日頃口にはしないのだとつくづく思ったことであった。

悠々には様々なプレゼントが「ほんの気持ち」と言いながら届けられる。最近は、ミカン、柿、リンゴ、ゆず、干し柿、鹿肉、イノシシ肉、刺身こんにゃく、蜂の子の佃煮、源助菜の漬物、その他名も知らぬお野菜の数々、それから高級焼肉も頂いた。本当はこんな贅沢ないしょがよかったかな〜。

 届けられるそのお気持ち、愛に包まれてスタッフも入居者もこの世の幸せを頂いている。

「わしはこんな幸せ今まで貰ったことがないに、有難うございます。」と口々に言うお年寄りと働くスタッフの笑顔届けます。

 

 皆さま、本当に有難うございました。今年もお世話になりました。来る年が皆様に幸せが訪れますように祈ります。

                                                     合掌

 

 

風の谷〜泰阜村   
  90代男性たちの生きる意味 考

 昨日は恒例の「大祓い」の式が執り行われ、最近入居なさった90代のご夫婦が感動しておられた。

「大祓い」は、山郷に住む民たちが山の神々にこの1年の罪咎を払い、来る年の幸いを祈る伝統行事である。神主様の祝詞に頭を下げ玉ぐしを捧げて、あらためて自分たちが山の恵みを受けていたこと、災害や危険に満ちた山での生活に山の神々の守りを祈ることを通して、山とそこに住む民の生活が決して安定したものでないことを自覚する祭りでもある。

 

 

 式の後、入居者や理事とスタッフ、近隣のお年寄り達との「直会(なおらい)」で御下がりのお神酒やお供物の鯛を分かち合いながら、顔見知りの人々との談笑を楽しんだ。

 「久しぶりに楽しんだ。これからも呼んでください」と、送迎車の中で近隣のお年寄りたちが赤い顔をして口々に言う。その笑顔を見ながら、介護保険サービスにこの生活に密着した年中行事の導入はあったかな〜・・・と思う。会費2千円、もちろん大赤字である。実はこの予算について、理事長と会計責任者の役員とのあいだに丁々発止の議論があった。しかしお金には代えられない宝があるのだ。「お年寄りの心からの笑顔を見たい」と懇願し、説得し、乗り切った。

入居者たちはみな80代後半から90代である。ご近所の顔見知りたちとのこんなに楽しい会に、90代の男性入居者たちがあたりまえのように一杯飲みながら団らんして、人としての交わりを取り戻すなんて、近年林立する高齢者施設にあったかな〜・・・と思いながら、暖かな和みの中で私も久しぶりに幸せを味わった。

 その夜一人の92歳の入居者に呼ばれた。「もう死にたいと思っていた。自分は生きすぎたと思っていた。しかし今日のような楽しい行事に参加して、もう少しこの世を楽しんでもいいかなと思えた。明日からはご飯をよく食べて、散歩してお迎えが来るまで生きてみようと思う。先生よろしくお願いします。」92歳男性、体重36Kg栄養失調の様々な兆候が出ていた。この体で96歳の重度認知症の妻の面倒を看ていた。コンビニでおかゆを買って食べていた。時々倒れて近医で点滴を打って生き延びてきたという。

 人はいろいろな事情を抱えて生きている。たとえ90代になっても人間らしい交わりが生きる勇気を与えるのだと改めて思ったことであった。

 

 

風の谷〜泰阜村           
新しい仲間たちが加わって

 11月から新しいお仲間が加わって、久しぶりに悠々に賑やかな声が戻ってきた。現在入居者は7人、スタッフ4人、デイサロン利用者(平日の9時〜4時頃まで)1人に、時々悠々食堂を利用する入居者の家族、近隣のお年寄り達、月に何組かの視察見学者が加わって、食事やお茶の時間には和やかな雰囲気の中で笑い声が絶えない。暖炉に火が入って、その前で新聞を読むご夫婦は(夫92歳、妻96歳)最近お入りになられた方たちである。9月に入居されたご夫婦は(夫90歳、妻88歳)、高専賃と呼ばれる村のアパートから移ってきた。この方たちが悠々に入居されて最初の日に口にしたことは「やっとゆっくり眠った。あちらでは夜当直がいないので、夜不安になる認知症の方々が(どうも複数いるらしい)部屋に入ってきて騒ぐので、眠れなかった。」というのである。

 悠々にも重い認知症の方がいないわけではないが、当直の方が対応してくださるので昼夜逆転の方がロビーに出てきても、そっと自室に誘導してくださる。夜中にトイレに行こうとして転倒するかたが時にいるが(ドーンと音がするので駆けつけて覗いて下さる)、お怪我がなければ、抱き起してベットに寝かせてくださる。糞尿まみれになっていた場合や異常が起こっていた場合には、ただちに理事長ならびに看護師やヘルパーに緊急連絡が入り、必ず5分以内に駆け付け病院に緊急搬送するかどうかを判断し、処置する。

 最低限のスタッフで、しかし最高の安心を与えている・・・と入居されたお年寄りが口にすることである。

特別なことをしているわけではない。必要なことをただちに解決するが、いつもすべてのスタッフが待機しているわけではない。「これで月額15万5千円はあまりにも安すぎる。病院への付き添い介助(往復の送迎付き)もマルメ(生活上のすべての介助込)なので、有難い。ついでに買い物も付き添い付きでいつでも欲しいものが手に入るなんて・・・申し訳ない、有難い」と言うのだ。

 入居者はこのようなことを体験すると1週間ぐらいで安心しきった穏やかな顔になる。高専賃から移ってこられたご夫婦を、村役場の方たちが目の当たりにして「たった1週間でこうも変わるのか・・・」と言われたそうである。

 私たちは、たとえ年を取られていてご不自由をあれこれ抱えておられていても、人間として大切に思っているだけのことである。

現在入居中の癌の治療中のかた⁽77歳)を抱えている。2週ごとの通院の付き添いは朝8時から帰りは午後4時頃になる。一緒にご家族を精神的に支えながらともに闘病に心を合わせる。どんなことをしても治って笑顔を取り戻したい。

 夫婦で家に閉じこもっているよりもと、悠々のゆったりとした普通の生活の(仲間の)中で闘病への支援をしている。主治医の指示を仰ぎながら三食を栄養豊かな食事にと工夫を怠らない。こうやって悠々のスタッフも精神的にサポートしながら、共に戦う家族だと思っていただけたら嬉しい。

 

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   山の民たちの重い枷について

 冬支度が始まった。村役の一つ道路愛護である。前日の雨で重くなった濡れ落ち葉を、すべての村道と側溝から掻き出して山に返す作業であった。今年は我が限界集落(9戸)のうち、2戸の戸主が重い障害と難治性の病を負ったため、力仕事をする男手を失った。その上今回は大事な所用でもう一戸がご夫婦で出かけられるということで、男手が3人も欠け、代わりに出てきた女衆が集まって皆が顔を見合わせた。急坂な山道を走る村道いっぱいに降り積もった落ち葉は、膝上までの深さの側溝に詰まり、いつもの軽愚痴を叩くものは誰もいず黙々と作業を続けた。みんな知っている。この落ち葉を撫でるように掃き清めておかなければ、雪が来て道路の落ち葉の上に降り積もったとき、落ち葉とともに急坂な坂道を谷底まで滑り落ちてしまうことを。

 しかしそれを知っている1戸の方は、事前にご夫婦で随分たくさんの範囲を掃き清めていたのだが、何が何が、二、三日風が吹き雨が降って、すっかりもとに戻っていたのだったが、その気持ちを汲んで誰も何一つ文句を言うものはいない。

 

 

 今回は村からも応援があって、がけ崩れの岩を重機で片付けてあり、女手で片付ける重労働がなくて皆でホット吐息をついた。

振り返れば10年前はみな若かったな〜とつくづく思う。一山をぐるりと回る村道+県道+山中深く走っている井水+神社+大峰山公園(+参道)一体何キロあるのだろうか。腰をかがめ湿った落ち葉を側溝からすべて掻き出して、箕(み・穀類をあおって殻・塵などを分け取り除く農具.竹・藤・桜などの皮を編んで作る)に入れて中腰で山に返すこの作業は、人手もなくお金もない貧しい村の村役という名の税金である。この緑豊かな自然に恵まれた美しい国・日本の7割を占める山々は、そこに住む今は年老いた村人たちの重労働によって守られていることを一体何人の国民が知っているのだろうか.村にいる限り死ぬまで続く重い枷を嫌がって若者たちが村から出ていくというが、都会でお金を払って筋力トレーニングやジョギングを楽しんでいる人たちに届いているのだろうか。あなたたちの吸っている酸素が、この山々の緑から届けられていることを!この度聞こえてくる環境税という増税から、私たち山の民には除外してもらいたい!!

 安倍さん.お願いがあります.もっともっと自分の国民の苦しみについて深い理解と愛情を注いでください。私たちは今あたりまえのように村を守っていますが、年老いて(現在80代が3割、70代4割、60代2割)年寄りが居なくなってしまったら、日本の国から豊かな緑はおそらく無くなってしまうのでしょうから。

風の谷〜泰阜村  
   「これからは新しい風が吹くよ」に励まされ・・・

 地域交流センター悠々の第9回通常総会は、「どうも潰れるらしい」との前評判の嵐の影響をまともに受け、心配げな顔をした組合員たちが、まるでお通夜の晩のような顔をして席に着いて始まった。ご来賓の皆様も、副村長、村議会議長、福祉課長、県中小企業団体中央会担当者が揃い、これもまたこの赤字経営をどう乗り越えるつもりかと、心配げな顔をして席に着かれていた。

 理事長のあいさつはこんな言葉で始まった。

「思い起こせば、社会福祉方法論の研究者であった私が、地域住民が集まって『住み慣れた地で、顔見知りの人たちに囲まれて最後の日まで暮らしたい』という高齢者たちの願いを形にするために、自分たち村民の手で運営管理するという計画書を、泰阜村村長にプレゼンテーションしてから12年という月日が経ちました。

 ここまでの日々、当初はまだ若かった組合員の皆様がワッセワッセとやってきて、それはそれは賑やかな日々がありました。10年経って80代90代となられた組合員たちは,皆あちこちに故障を抱え病院通いの身を抱えるようになり、悠々のボランティアどころではなくなって悠々は寂しくなりました。当初の村外(都会)のリピーターの方たちも年齢を重ね、泰阜村までの距離の遠さが心身共に重荷になり、「そこまではとても行けない」と言われるようになりました。

 10年という時間がこれほど重いものであるということは、誤算であったと思います。

 この利用者の減少は悠々の経営を直撃し、この1年は見事な赤字となりました。本年度は前期の高額寄付による剰余金で赤字をカヴァできましたが、村民の方々の入居者の増加、食堂利用者の増加をどう工夫するかが課題であると思います。

 これまでは組合員の皆様の運営管理への温かい奉仕と季節のお野菜の寄付、村役場からの補助金援助、役員の皆様の無私の奉仕の賜物をいただいたおかげで、ここまで来ることができました。

 しかしこの危機的状況の最中、ここにきて立て続けに5名の入居者が表れ、天の助けとはこのようなことかと涙を流すほどの安堵をいただきました。悠々に人生を託されたこの大切なお年寄りのために身命をなげうって精進する覚悟をあらたにいたしました。今後とも変わらぬサポートをよろしくお願いいたします。」

 

 帰途に就いた組合員のお一人が動かれ、病に伏している他の組合員に悠々の窮状を伝えられたとのことが聞かれました。そこでは住民たちに悠々のサービスの中身を説明し、悠々の利用を促進するようにお誘いの声掛けをしていただいているようでした。

 これこそ天が動かれ、人々の心の中の愛に火をつけてくださったのだと感じ、心折れた理事長にもう一度やる気を起こす「新しい風が吹く」見えぬ力を感じました。

 悠々のモデルでもあったスウェーデンの「高齢者協同組合」は10年という節目に公的福祉制度(介護保険に似たもの)によって消滅しましたが、過疎山村の地にあって「悠々」はなぜか復活するのですね。

風の谷〜泰阜村   
   第9回通常総会を迎えて

 南アルプスに雪の稜線、山里に真っ赤な柿すだれの立ち木の点在、山奥の村道は落ち葉の絨毯・・・美しくすっかり冬の顔をした泰阜の森の、静けさの中に渡り鳥の声が響く。

 11月23日に通常総会を迎えた悠々の理事長、総会資料作成に追われている。昨年は高齢の入居者をつぎつぎとお見送りして、一時入居者が3人になったことが影響し、赤字が膨らんだ。驚くことに10月以降一気に入居者6名が新たに加わることになり悠々は計8人の入居者で今度は少ないスタッフたちから悲鳴が上がる。デイサロン(組合員さんたちの利用のため無料だが・・・)もご利用者が増え来季の経営見通しは行けるとみたが、今期の事業報告と決算報告をまとめていると、生き物(人間もレッキとした生き物)を扱っている自分の経営能力のなさをつくづく思い知らされる。勇を越して正直にありのままを組合員に告げるつもりである。

 だが問題は一つある。今期事業の赤字の主要因が食堂にあることが判明した。今年度の事業収入86万円に対し(利用者が少なかったため・・・)、料理人の給料が年収260万円、仕入れ収入が183万円・・・(山ほどのお野菜の差し入れがあったにもかかわらず)。(悠々食堂、皆を喜ばせたい一心で贅沢したかな〜)、開設当初の様に無給で働く理事長が毎日3度の食事を作るか・・・と心が揺れ動く(出来もしないのに・・・)。

 この理事長75歳(あと数ヶ月で76歳に突入)意欲ばかりがある。調理は好きである(時々うまいと喜ばれることもある)。管理・事務作業よりもずっと、ずーっと好きである。しかしあまりに人手が少なく、それをあちこちカヴァーしていると、一日も休んでいないことに気づく。

使用している従業員は勤務条件に関する様々な規制があって守られているが、経営管理者たるもの、死ぬほど働いても誰からも守られない。過労死してもだれにも文句を言えない(この間コンビニの店長がTVで訴えていた)。組合員からは経営責任を厳しく追及されて総会で棒立ちになったこともあった。

 これで跡継ぎのことを聞かれても、自分でさえ「やめておけ」とアドバイスしそう・・・。

地域交流センター「悠々」の事業は、日本初の試みである。

 「住み慣れた地で、顔見知りの人たちに囲まれて最後まで住み続ける。血のつながりはないけれど、心満たされて最後を迎えることが出来る」そんなことを夢見てこの事業を立ち上げようと思ったのが2004年5月。大学の教員だった(武士の商売とよく言われた)が、もう12年経つ。

 悠々の入居者たちのゆったりと幸せそうな笑顔をみた人はだれもが、「自分たちも最後は、悠々で迎えたい」というのだが、悠々のケアには国の補助のシステムはない。(村からは施設の維持管理費500、600万円を頂いていて、おそらくそれがなかったら、2年目に潰れていたと思う。)貧しい村にこれ以上の負担はかけられない。ケアの量(それも時間という量、質は問わない)ばかりではなく、その質にどのような補助金が可能なのか。貧しい中山間地域の夫を亡くした90歳以上の寡婦たちは、1ヶ月3万円程度の年金(福祉手当)で一人山中に取り残されているのを、安倍総理!ご存知でしょうか。

 

風の谷〜泰阜村   
    泰阜村に“米大統領選”激震

 信じられないことだが、隣の国の(だいぶん遠方だが)大統領選のニュースで、悠々の仲間たちは一日TVの前に釘付けになった。その姿を見て感じたこと。この国はやはり米国の属州であったか!という感、いよいよ日本に徴兵制が現実化するかという恐怖(悠々利用者は90歳以上、スタッフも戦争経験者若干名)に恐れおののいた。大事な大事な子供たち、孫たちが、戦場に行くのか・・・。あのスマホ中毒のこの子たちが銃器をもって戦場を走り回れるとは到底思えない。日本はもう駄目になるのか・・・との恐怖を人生の最後に味わった。

 それほど私たち日本は、アメリカに甘えていたのであろう。何一つ自覚しないでここまで来た。戦後71年、この幸せの代償を自分たちの子や孫らが払うことになるのだろう。

 さてそれが本当であったとしても、杞憂であったとしても我々高齢者は、やはり自分のことは自分で立つしかないのだ。かつて終戦と同時に国の紙幣は紙くずになり、ため込んだ貯金は閉鎖され、人生をかけて建てた家も財産も藻屑と消えたあの悪夢を記憶している人は、75歳以上なのだ。

 さて「悠々」がここまでやり続けてきた「お年寄りでも障碍者でも、最後まで安心して暮らすために」という夢の実現が、本気で問われる時代がそこまで来ている。平和な時代だからこそ、夢をおいかけるというそんな贅沢が許されたのだ。そんな気がする。

 

皆様はどう考えるか。今度こそ真剣にお知恵を拝借したい! 

 

風の谷〜泰阜村   秋色に染まって

 悠々の庭を華やかに彩っていたコスモスが枯れ、里山のあちこちで、華が咲いたかとしばし見とれるような渋柿の実が、美しい立姿を見せる季節が来た。遠くに見えるアルプスの山に初冠雪、秋色に染まった里山の端からは落ち葉を焼く煙があちこちで登るようになった。

 稲の取り入れも一息ついて、お年寄り達が冬支度に忙しくなった。悠々のお年寄り達も庭の渋柿を採ってきては、ベランダに干し柿をつるし、黄色のかりんをもらってきては、かりん酒を作って咳止めの特効薬の準備に忙しい。

 山奥に住む炭焼きのMさんは今年も備長炭に負けないと自慢の上等な炭を持ってきてくれるだろうか、健康で炭を焼けるだろうかと年々お年を増す身を想う。

 さて今年も冬が近づいて、悠々の入居者に変化が現れた。組合員の中でも90歳を超える方々が現れ、冬の雪に閉じ込められた時、雪かきをして幹線道路(ここまでは村が大型ショベルカーを駆使して除雪をしてくれる)まで出られなくなるとの予測から、冬季入居のお申し込みが増えた。時あたかも重要介護者しか介護保険施設に入れないとの締め付けが浸透してきたからでもあろうか。村役場の福祉課からご紹介を受けて、お年寄りを連れたご家族が見学に見えるようになった。

 その少し前から昼間独居になる重度障碍者のM.K.さんや、難病を発症したM.S.さんが悠々に昼間だけ身を寄せられ、賑やかな笑い声に包まれるような雰囲気に引かれるように(その人たちのお見舞いに悠々を訪れることで悠々の温かさが口コミで広がっているようだが)村の60代、70代の青年たち(それぞれにお年寄りを抱えていたりする)が、悠々を直に見学する機会を得て、一気に様子が変わってきた。 空き部屋の確認をして、急いで予約をしたいという。悠々の空き部屋は二人部屋は満室、永住入居の方々の一人お部屋は二つ、昼間のみ利用のデイの方用には一つが開いているだけである。

 畳コーナーにも入れるといった見学者がいたが、そんなところでは心豊かな老年を到底送れないだろうとの判断からお断りしている。そして身分の隔てなく悠々は先着順である。

 昨日も、お試しお泊りをした独居のS.H.さんが一晩で気に入って、迎えに来た息子さんに「ここにずーっと居たい。もう彼方此方には行きたくない」とおしゃって、お部屋の予約をして「家族で話し合ってきます」とおしゃって帰られた。

 

 9年目の総会は今月23日である。組合員の方々に「俺たちの配当金を払えないような経営状態の責任をどうとるか」というお言葉を覚悟していたが、赤字の言い訳は、この様子では何とかなる(損益分岐点は6,7人の利用者)と言えるだろうか。

 

 長い間この日を待っていたような気もするが、この日を迎えてしまえば短かったような気もする。昔開設時に村長から「だいだらぼっちは、村民に理解されるのに20年かかったからね」と言われたことをまた思い出し、噛みしめたところである。 

風の谷〜泰阜村     
  秋本番!そしてこちらは決算・総会準備

 今年は雨が多く(台風直撃が多く?)、山の民の唯一最大の楽しみ「キノコ採り」がうまくいかない様子・・・(本音は余程でないと漏れ聞こえてこない)。普段は足が不自由なご様子のお年寄りでも、山ではカモシカが飛ぶように歩き回るらしい(目に見えるようだ)。泰阜の山は不在地主の山が殆どで止め山が少ない。そこをよ〜く知り抜いた業者とおぼしき巨大なリュックを背負った中年のおじさんたちが大勢押し寄せる。他県ナンバーの四輪駆動車がこの季節に限って大挙して押し寄せる。それでも都会人の我が家にも珍味である松茸の入った籠がベランダにそっと置かれていたことがあった(何年前だったかな〜)。仰天した夫が、都会の同級生に電話したら「こっちにも送れ」と言われ、自分の口には到底入らない500g1万円の高級品を購入して送る羽目になったこともあった。最近はその噂も聞かないので、よほどの不作なのかもしれない。

 さて10月に入った。我が「悠々」の決算月は9月末日、総会は11月23日と決まった。第9回目の総会開催である。

昨年の総会の来賓あいさつで、村長が「よくここまでやってこられた・・・」とのご挨拶を頂いたが、今年はその心配に倍する経営状態である。貧しい過疎の村の住民にとって、税金は上がるし、社会保険料は上がるし、サービスは削られる。本当の世の中とTVで国会中継でみる風景とはどうも違うようだ。

 しかし貧しかろうと季節は廻り、黄金色の稲穂がなんとか台風被害も逃れられ収穫の秋が来た。村民が楽しみにしている山の幸の恵み(雑キノコはまだある)が手に入り暫しの間笑顔がこぼれる。

 その中で「悠々」の存在が少しづつ口コミで知れ渡るようになり、私たちの介護保険サービスの隙間産業がとても大切なものらしいと理解されるようになってきた。

 緊急時(24時間オンコール)の通院の付き添い(無料)、悠々食堂のランチ(@500円)、ケア付き入浴(@500円)、無料お茶付生活相談(愚痴OK)、体調悪化時のケア付きショートステイ(5千円/日)、体調の悪い方の昼間のリハビリを兼ねたデイサロン(無料ー休憩のための個室も利用可)も好評である。これに加えて近日大評判の月1回の「生活リハビリ教室」や出張美容(無料貸会場なので、カット@2千円・月1回)などすべて送迎(無料)付きである。時々お泊りの視察をも承っており、持ち込み可のお酒を楽しみながら、包括的地域医療&ケア談義に夜中まで話に花が咲き・・・なぜかゆったりと癒されたと満足して帰途に就かれる。

 従って入居施設ではないので入居者は少ないが、その他の小さな雑事でスタッフ(常勤4名、非常勤1名)はてんてこ舞いである。

できるだけ家にいて、助けてほしいときだけ助けてほしいことを助ける。本当に必要なことは小さなことで、そんなにしばしばおこることではないらしい。それが起こったときはおそらくターミナルで、その時こそ「悠々」で最期まで人として大切にしてもらえるケアをやったと言い切れるし、これからもその日のために私たちは存在していると思っている。今回の総会はこのように報告したいと思っている。

風の谷〜泰阜村    
    悠々の風景〜「生活リハビリ教室」に風が吹く

 秋の彼岸が近づいて、里山にススキの穂がゆれ街道沿いのコスモスが美しく彩を添えると、わが村の秋の訪れを感じる。しかしその密やかな喜びの一方で、次々と襲い掛かる台風に怯えながらも被災地の惨状をTVで見つめながら、次は自分の番かもしれないと、避難場所やその土砂崩れの危険個所の可能性などを語るお年寄りの話に耳を傾ける。

 悠々では、今日第6回を迎える「生活リハビリ教室」に口コミ参加者があちこちから一人二人と増え始めた。最初は理事のリハビリ医師の声掛けに答えて、悠々の周りのご近所さんたちの月1回の「体の心配と認知症への心配」に答える形での集まりであった。

「生活リハビリ教室」では、まずH先生から診察のあとに「養生のお話し」コーナーがある。これまでは「腰痛の養生・自分でできるストレッチ体操」、「夜中に足がつる時のほぐし方」、「体のツボへの爪もみ養生」等々、病院では相手にもされない山国のお年寄りの悩みに応えて、みんなで一緒に練習をする。その間に日本でも指折りの義肢装具士の資格を持つ理学療法士さんによるリハビリ評価と、五十肩に効く「アイロン体操」や、年季の入った脳卒中の方への装具、補装具のアドバイスやノルディックウォーキングの指導や、医師と一緒に頚椎症による四肢麻痺の方への四輪駆動電動カートの乗車評価と指導等々、一人一人にあった手当てをして下さることが評判で、かなり広い範囲での参加者が増えた。もちろん悠々得意の無料診療の医療・生活相談である。「月に1回のその日が楽しみで待ち遠しい」という声も聞かれるほどで、嬉しいことである。

 参加費はワンコイン(500円)での悠々ランチ代である。私たち悠々スタッフは1週間ぐらい前から、今度はどんなご馳走を作ってお年寄りをびっくりさせたり、「美味しい!」と言う声とその笑顔見たさに知恵を絞る。

 その成果もあって、悠々食堂に平日や土日にご近所さんを誘って悠々ランチを食べにくるお年寄りがちらほら見えるようになった。

また、お体が不自由になったり、昼間独居になるお年寄りが朝夕の送迎付きで、朝9時〜3時のお茶の後まで悠々で過ごすようになった。理由は昼間働きに出かけて留守の間、転倒や急な発作が心配なのと昼食でバランスの取れた悠々ランチが食べられることである。家族は安心して悠々に昼間の健康管理や見守りをしてもらえ、本人も家でベッドでTVをみるだけの生活より楽しいということで進んで悠々にやってくる。これももちろんワンコイン(500円)の悠々ランチ代のみである。ちなみに送迎付きだが送迎代は無料。時々誰かが置いていった特大の手招き猫貯金箱に、チヤリンと音がして心ばかりの(と本人たちが言う)寄付金が入れられる。

 今はお二人のお年寄りの自主訓練の場としてリハビリ(ロビーや芝生の庭での歩行訓練)に利用されている。・・・何と効果が上がっている。四肢麻痺が改善してきた。がんの治療中のリハビリも効果がありそう。嬉しいことである。

 悠々を開所して9年目に入った。当初の目的が少しづつ見える形になってきた。家族に強制されてではなく、自ら望んでお年寄りが自宅で安心して暮らし続けるために、手助けをしたい。その願いが形になってきた。長いようで短い年月である。


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