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風の谷〜泰阜村
癌のターミナルケアを共にして

 悠々のケアには、介護保険指定事業所でにはないメリットとして、癌のターミナルを家族と共に最後まで看取るという特別な支援がある。値段は同じ1泊3食(特別手作り食付き)ケア付き5千円。そのような場合でも高いか安いかを考えてこなかった。これまでにスタッフを一人、悠々の理事さんを二人、神奈川県から「悠々で死にたい」と言って介護タクシーで飛び込んでいらした方お一人をお引き受けした。最近は抗がん剤治療は通院で行う。泰阜村は山奥なので、治療のために片道1時間の山道を毎日通院できる人は少ないと思う。ステージが重くなってくると、体力的に到底自分では運転できなくなる。しかし家族(妻)が運転免許を持っていない場合、タクシーで片道1万円弱を往復は払えない。この過疎山村でそれも引き受けなければ命の保障はない。精神的に追い詰められた家族ごと引き受けて、個室にて療養が始まる。最近、悠々のケアスタッフに看護師がいること、顧問医師が絶えず相談に乗ってくれていること、病院のケア記録に準じて毎日24時間の詳細な記録を取り、それを通院時に提出する事等で、主治医から信頼を得られた場合、内服用の麻薬鎮痛剤の治療をお任せいただける場合もあった。その最後は壮絶であった。妻一人では到底耐えられる場面ではなかったと思う。私たちは全力を尽くして協力し、本人と家族をサポートした。その時私たちはもう家族であった。

 同級生のお一人がお見舞いに伺ったとき、「悠々があってよかった」と言っていたと聞いた。

振り返れば最後の闘病と言えるのは短い時間であったが、あまりにも重くとても家族だけで看取るなどということは無理なことと実感した。

問題は、この凄まじい闘病が、病院ではなく自宅で家族に任せられる現在の医療体制である。先日、「昔はよかったよね〜」という話になった。ベットの下に四半畳のコロのついたベットらしきものがあって、夜になると家族がベッドの下からそれを引き出して横になり、オムツの交換やら、清拭やら、着替えやら、食事の介助などをやっていたものだった。家族は交代で病院に詰め、病人と共に病状の進行に一喜一憂して最後を迎えたものであった。病院の医師や看護師に見守られているという安心感があった。これに代わるものが今の治療体制にはないことになる。本人も自宅で子供たちや親戚の人々があれが効く、これが良いと言われるものを何でもかんでも試し食し、内服し、次の治療開始のための検査時には腎臓が悪くなっていたり、血液の状態が悪化していたりして治療が進まないこともあった。

 悠々があってよかったと私も思う。本当の住民のニーズはその時の医療・福祉体制からは零れ落ちてしまうものなのだと知ったからである。この貧しく弱った家族から、これ以上のお金を採れない・・・、これが悠々の問題点である。

 日本の医療と福祉が、その利潤追求のために切り捨てたものは、実は貧しい人々の命なのではないかと感じた。

コメント

一昨日、昨日と留守にしておりました。

 「本人も自宅で子供たちや親戚の人々があれが効く、これが良いと言われるものを何でもかんでも試し食し、内服し、次の治療開始のための検査時には腎臓が悪くなっていたり、血液の状態が悪化していたりして治療が進まないこともあった。」

 実はつい最近、知人の奥様ががんで亡くなられました。自宅で療養し、娘さんがINでがんに効くという民間療法もいろいろ試したようですが、急に体力が落ち亡くなったそうです。人づてに聞いた話によりますと、それらの治療薬には高級車一台分の費用がかかったそうな。そんな身近な話を上記の本田さんの言葉から思い当たりました。
 一方、私たち夫婦が長年お付き合いをしている家族に、小笠原一夫さんという麻酔科の医師が高崎にいます。彼は日本でも先駆的な在宅地域医療に取り組んできました。彼は、がんの終末期に自宅で死を迎えたいという患者や家族の願いに寄り添うことで、どんどん
在宅地域医療ができるような仕組みを考え、在宅ケアのネットワークを広げ、安心して在宅ケアを実現できるよう取り組んでいます。

 しかしながら、在宅で終末を迎えるためには、家族の介護抜きには無理ですし、ある程度の経済力がなければ実現できません。ですから、そういう意味で、

 「悠々があってよかったと私も思う。本当の住民のニーズはその時の医療・福祉体制からは零れ落ちてしまうものなのだと知ったからである。この貧しく弱った家族から、これ以上のお金を採れない・・・、これが悠々の問題点である。」

 この本田さんの言葉に深くうなづくと同時に、悠々の台所事情を思えば、さて、それではどうする?という困難な問題を突きつけられています。



  • 加藤充子
  • 2018/09/19 2:14 PM
加藤さん いつも真摯なお言葉を有難うございます。貴方の言葉を心待ちにしてこのブログを続けています。悠々も要介護4のお年寄りをお二人も抱えましたが、一日5千円(一泊3食付きケア付き)です。これ以上払えない人々を抱えているからです。でもお金持ちと同じように全力を尽くしてお世話をしたいのです。そう最後まで家族だったらそうするだろうということをやりたいのです。思いを込めて、愛をこめて。
  • 本田玖美子
  • 2018/09/19 11:17 PM
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